研究概要 |
現単一有機分子にスピンを注入し,スピンに依存した伝導現象を観察する。強磁性電極に単一分子を架橋し,磁場を印加しながら,電気伝導度を計測し,分子の長さや構造,温度,印加電圧の影響を調べることにより,単一分子へのスピン注入過程と分子内でのスピン輸送に関する知見を得るとともに,磁気抵抗素子としての応用の可能性を探ることを目的とする。 本年度は、以下の課題に関し成果を得た。 1.単一分子の磁気抵抗効果の計測 あらかじめ電子ビームリソグラフィーとリフトオフ法により作製した金のナノギャップ電極をニッケルで電界メッキすることにより、ニッケル電極を用いたブレークジャンクションを行った。ベンゼンジチオール分子を挿入して、室温において磁場を掃引しながら電気抵抗の値を測定すると、抵抗値が大きく変化することが確認できた。分子架橋構造において、磁気抵抗変化を観察した最初の例である。今後は、より長い分子を用いて、スピンの注入に関する実験を行う。 2.OHアンカーを用いた分子架橋構造の作製 これまでは、分子と電極の接続部位には、チオール基が用いられることが多かったが、合成の容易さを考えると、OH基の利用も検討する価値がある。OH基を有する分子を用いて、ブレークジャンクション法により伝導度計測を行ったところ、金電極に対して、確かにOH基によって架橋されていることが確認され、アンカー部の分子設計に広がりを持たせることができた。
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