研究概要 |
1.対称性による歪シリコン細線導波路の非線形性に関する考察 歪導入SiとSi表面のの対称性に関する議論より,波長変換に活用可能な配置を特定した。実用上は,(100)基板上<011>方向伝搬の配置がもっとも望ましいことがあきらかとなった。 2.歪シリコンの2次非線形光学特性に関する理論計算 (100)SOI基板上に作製したシリコン細線導波路(伝搬方向//[011])に導入されるであろう不均一歪に起因する2次非線形光学効果の大きさを理論計算により定量的に見積もった。歪Siクラスタに対する分子軌道計算(CNDO法)の結果,導入される歪量に対して1乗で増加する成分とほぼ2乗に比例する成分とがあることがわかった。これらは歪導入方向に対する対称性の違いに起因する。また,有限要素法を用いた応力歪分布の計算より求めた現実的に導入可能な歪量の見積りと組み合わせて検討をおこない,位相整合可能な成分として最大でサブpm/V程度の非線形発現が可能であることをあきらかにした。また,実際に作製したSi細線導波路に意図せず導入された歪の分布を計算し,その非線形光学特性を理論計算した。その空間分布と位相整合可能性の考察とから,扁平HIC導波路構造に歪を導入することでHIC-BPMの手法を用いた位相整合可能なx^<(2)>成分が発現することを初めて示した。 3.シリコン細線導波路における非線形性に関する実験的評価 上記計算に基づいた設計に従って作製したシリコン細線導波路チップをを用いて,その波長変換特性評価をおこなったところ,現有の測定装置の検出限界以下の出力し得られていないことがあきらかとなった。これは,今回用いたシリコン細線導波路には意図的に大きな歪を導入していないためで,上記の理論計算の結果と照らし合わせて矛盾のない結果であるといえる。今後は,SiN層装荷などの手法によって積極的に歪を導入したデバイスで研究を進めていく必要がある。
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