研究概要 |
本研究では,感圧塗料(PSP)による気体流の二次元圧力計測法として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)技術を応用した有機EL-PSPを開発することによって,PSPによる計測精度を劇的に向上させ,PSPでは実現が困難とされている大気圧近傍での微小な圧力変化を計測する技術の確立を目的とする. 有機EL素子自体は広く開発が行われているが,PSPとして利用するためには素子に十分な酸素が透過・浸透する必要がある.そこで,基板にAl陰極,発光層,気体透過性のあるポリマ電極の順に積層し'たトップエミッション構造に着目して,素子の開発を行った。ポリマ電極としてはPEDOT:PSS(Poly(3,4ethylenedioxythiophene)poly(styrenesulfonate))を用いた.作成した素子が圧力感度を持つことを確認するために,光励起により色素分子を発光させ圧力感度を調査した.その結果,大気圧近傍の90~110kPaにおいて圧力感度を持つことが明らかとなり,PEDOT:PSSが十分な酸素透過性を有することを示した.開発した素子は圧力センサーとして十分な感度を得られたが,PEDOT:PSSの膜厚によって酸素透過率も変わるため,膜厚を調整することでさらに感度向上が期待できる.続いて,有機EL素子として機能させた際の発光を確認した.その結果,時間や輝度に課題は残るものの,発光することが確認された.以上から,陽極にPEDOT:PSSを用いたトップエミッション構造の有機EL素子は圧力感度を有することが十分期待でき,圧力センサーとして圧力計測に適用できる可能性を示した.
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