研究課題
挑戦的萌芽研究
微小なグラフェンのカップが数多く積層してできているカップスタック型カーボンナノファイバー(CSCNF)を試料として、そのカップ間隔を人為的に操作することによる熱伝導率の変化を定量的に計測することを目指し、T字一体型プローブ法を応用した「その場」計測を可能とするナノセンサを開発した昨年度に引き続いて今年度も実験的にナノ材料1本の熱計測を行った。CSCNF試料1本の熱伝導率計測から、グラフェン層間の単位面積あたり熱抵抗は10^(-10)[m^2K/W]のオーダーであることがわかった。この値は分子動力学シミュレーションで報告されている10^(-8)に比べて2桁ほど小さい。これはフォノンが弾道的に層間を透過していることを示唆するもので、ナノ材料においては抵抗の足し算ではなくて系全体で熱流を評価すべきものであるとわかった。すなわち、カップ間隔を操作して熱伝導の変化を見る意義は低いとの結論に至った。そこで、実験対象を多層カーボンナノチューブの先端と固体表面の間のファンデルワールス熱伝導へと切り替え、上記ナノセンサによる界面熱抵抗の定量的計測をHRTEM観察を併用しながら実施したところ、グラフェンのc軸方向と金表面の間では10^(-8)[m^2K/W]程度であることがわかった。さらに、a軸方向についても機械的に開いた先端を用いて実験し評価したところ、c軸の場合よりも単位面積あたりで1桁ほど小さい熱抵抗が得られた。この結果は理論的予測とよく一致するものであり、本研究の信頼性が確認されるとともに今後の研究の展開に大きく期待できることとなった。
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210000066801