研究概要 |
22年度は,ロボット協調から被る人間のストレスの定量化と低減化のための新たな設計指針の導出を目的とし(1)ロボット協調から被るストレスを評価する手法の構築(2)実システムでのストレス測定および改善のための設計指針の導出を実施した. (1)では,人間・ロボット協調系に内在する精神的負荷,負担及びそれによって生じる減退的効果について体系的に整理した.負荷に関しては,人間・ロボットの作業分担に関する知見から,8種の負荷因子(課題の困難さ,作業の一様さ,目標・達成度の分かりにくさ,身の危険を感じる外的要因,統制される作業ペース,作業システムとの情報伝達の齟齬,作業のしづらさ)を列挙し,また,負担に関しては,先行研究で主観指標として用いられる9種の負担因子(知的負担,時間的圧迫感,努力,身体的負担,達成感のなさ,不快,倦怠,恐怖,驚き)を列挙した.さらに減退的効果に関して,作業への悪影響の観点から精神疲労,疲労様状態,不快心理,情動心理の4種の効果を列挙した.減退的効果はそれぞれ対応する4つの生理指標(増分フリッカー値,減分フリッカー値,αアミラーゼ,皮膚電位)から,また負担は,それぞれSD法(主観指標)により定量的に評価可能である.そこで,負荷-負担-減退的効果の因果関係を先行研究の知見から明示的に与え,各減退的効果の生理指標値を精神的負担の主観評価値比率で案分して各負担を推定し,負荷に関連した負担推定値の合計を各負荷の評価値とする評価手法を提案した.これにより,生理指標の客観性と主観指標による相対評価の信頼性を生かす評価手法を確立した. また,(2)では上記を人間ロボット協調型セル生産システムへ適用し,ロボット協調の場合と,人間のみの場合における各精神的負荷の評価値の比較から,精神的負担の低減が保証される「ロボットの作業ペースは不快心理を生じさせない程度に遅くせよ」など10項目からなる設計指針を策定した.
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