研究概要 |
1960年代にオーストンスイッチによるテラヘルツ(THz)の電気振動が観測されて以来,光伝導アンテナを用いたテラヘルツ電磁波の発生と検出に関する研究が行われ,分子振動を中心とした遠赤外吸収スペクトルやメタマテリアル物性研究に用いられている.しかし,その光源および検出器として用いられている典型的な光伝導アンテナでのスペクトルのピーク周波数は0.2~0.5THz,帯域は2~2.5THz程度であるのが現状であり,テラヘルツ物性研究のスペクトル領域は極めて限定的である.そこで,新手法による中心周波数の高周波化および広帯域化を行うことは電磁波物理・工学の面で学術的に意義があることである本研究では,超短パルスレーザー光電界電離により光速で伝搬するイオン化フロントを生成し,種光としてのテラヘルツ波の中心周波数・帯域幅を制御する新奇の変換器の可能性を探り,最終的に超小型デバイスのコヒーレントテラヘルツチューナーを実現することを目標として研究した. 平成22年度は,この超小型デバイスを実現するための,テラヘルツ導波路を開発した.これはレーザーとテラヘルツ電磁波の相互作用領域を確保するためである.そこで,スラブ導波路と方形導波管を用いる効率的なテラヘルツ導波路の可能性を調べた.テラヘルツ光とプラズマの相互作用による現象を顕著に観測できるようにするため,テラヘルツ時間領域分光法に導波路を適用した.間隔50umの銅平行平板導波路および方形導波管(内寸法430um×860um)を用いて,テラヘルツ光の伝搬特性を観測した.超短パルスレーザーによって瞬時に生成されるプラズマサイズ程度の空間にテラヘルツ光を導波させることができた.これらのことから,超小型デバイスを実現するための知見を得ることができたと考えている.
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