研究概要 |
本研究では,アルミニウムやチタンなどの軽金属表面にアノード酸化をいう簡便な手法により,表面形態を制御した多孔質酸化皮膜を形成し,超撥水・超撥油性表面を創製することを目的とした。超撥水および超撥油表面を創製するには,表面エネルギーが小さくなるように表面組成を制御するとともに,表面粗さを導入する必要がある。特に階層構造をもった多孔質表面が表面を超撥水化するのに必要となる。 階層構造表面を形成するために,まず,斜入射マグネトロンスパッタ法(OAD)とアノード酸化法を組み合わせた。アルミニウム上にOADによりサブミクロンサイズのAl-Nb合金カラム構造を得,さらにアノード酸化によりナノボアを導入した。酸化物表面は親水性であるので,現在知られている物質で最も表面エネルギーを小さくできるCF_3基を末端に持つフルオロアルキルリン酸単分子層で表面をコーティングした。その結果,超撥水のみならず,超撥油性までも発現することができた。この研究を通して,超撥油性を達成するには,階層構造を精密に制御する必要があることがわかり,特にサブミクロンカラム間のギャップサイズの制御が重要であることを明らかにした。 一方,アノード酸化のみにより,階層構造を形成する手法の開拓として,ニオブのアノード酸化を行った。高温のリン酸塩含有グリセリン溶液中におけるアノード酸化により,マイクロコーン上の表面形態をしたナノポーラス皮膜が得られる。このコーンサイズやナノ構造をアノード酸化電圧や電解液中の水分量で制御でき,サイズが大きく,コーンの先端角が小さいほど,水の接触角が大きくなることがわかった。その結果,175°という極めて大きな接触角を持つ超撥水表面を得ることができた。
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