研究概要 |
種々の薄膜材料に望みの方向と大きさの『変形応力(歪)』を動的に加えることができる形状記憶合金を利用した『アクティブ歪制御基板』の創製を行い,薄膜デバイスと一体化させデバイスの特性に及ぼす『歪』の効果を検証し,高機能薄膜デバイスの開発に関する基礎的知見を得ることを目的とした.本年度は前年度に実験場の問題点として提起した「形状記憶合金薄板上へのSi結晶膜の形成と密着性の評価」について引き続き検討を行ったが,密着性の良いSi結晶膜を形成させることが出来なかった.しかしながら部分的に形成したSi薄膜を低加速FE-SEMによって観察した結果,角度選択型反射電子(AsB)像および後方散乱電子回折(EBSD)を併用することでSi中の歪分布が定量的に解析できることが明らかとなった.さらにAsB像は形状記憶合金の内部構造,特にマルテンサイトの双晶欠陥,バリアント配列の広領域観察・解析に有効な手段と成り得るという新たな知見が得られた.結果として当初予定していたSi/SiO_2/形状記憶合金/SiO_2/Si多層膜を基本とするアクティブ歪制御基板構造の試作と特性評価の実施には至らなかったが,今後も1)スパッタリングによる形状記憶合金の成膜,結晶化および記憶熱処理,2)合金薄膜のパターニング(リフトオフ法),3)Si基板部加工(異方性エッチング)4)Au電極形成,5)Si薄膜形成等について継続して検討を行う.
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