研究概要 |
本研究は,地球温暖化の進行を抑制し,そして昨今のエネルギー供給不安の解消に向けての足掛かりとするために,石油代替エネルギーとして再生可能エネルギーである地熱資源の有効活用を目指している.そこで,低エンタルピーの地熱・温泉熱だけで動作する自律駆動型水素吸蔵合金アクチュエータを開発し,その有効性を示すことを具体的な目的とした.当アクチュエータに求めたものは,数十℃の温度差で動作が可能であること,水素吸蔵合金1kg当たり8Wの出力を出せること,そしてすべての動作が高温・低温熱源の温度差によってのみ行なわれるということである.このアクチュエータの駆動においては,排熱や余剰熱を利用するため燃料費はかからず,また駆動のために二酸化炭素等の温室効果ガスも排出しない.そして得られる力学エネルギーはそのまま利用してもよいし,発電に使ってもよい.本研究では,その取り掛かりとして,自律駆動型アクチュエータに必要とされる水素吸蔵合金の特性,合金容器の幾何学的特徴,水素ガスの流動に影響を及ぼす因子,熱交換性能を評価し,現場実証試験に相応しい地熱・温泉地域および施設を選定し,最後にそこで当アクチュエータの実証試験を実施した.本研究で得られた成果は次のようである:(1)水素吸蔵合金アクチュエータの試作において,合金容器には熱伝導性の良い銅管を使用し,水素ガスは漏洩しやすいため配管の接続には極力継手を使用せず,ロウ付けすることが有効であることがわかった.(2)安全のために水素圧の上限を1MPaとした場合でも,アクチュエータの動作には十分な圧力であった.(3)北海道内の温泉地における実証試験では,温泉水を高温熱源,雪氷水を低温熱源として当アクチュエータを動作させ,自律的に駆動する温泉水送水ポンプを稼働させた.(4)その結果,合金1kg当たり8.8W程度の出力を得ることに成功した.
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