本研究は、カエル卵抽出液とカエル卵の単離表層を組み合わせることによって、収縮環の形成を誘起できる無細胞系を構築することを目指し、(1)卵表層単離法、(2)卵抽出における星状体形成の誘起、(3)表層の抽出液処理条件、(4)単離表層における収縮環形成の評価系、の4項目について検討を行うことを目的としている。平成21年度には申請者の異動(東京工業大学から名古屋大学)による研究室の移設や実験室の改修などにより、(3)と(4)については充分に検討することができなかったが、他の項目に関しては以下の成果が得られた。(1)卵表層単離法については、シアノアクリレートを薄く塗布したカバーガラスを卵(賦活後に囲卵腔が形成された卵の場合は、フィコール液で処理後)に圧着後、氷令した卵抽出液調製用の緩衝液中でパスツールピペットによる水流で細胞質を除去するという方法を確立し、この方法により、細胞質の混入が少ない表層標品が調製されることを確認した。この方法によって未成熟卵母細胞、減数第1分裂期の卵母細胞、成熟卵、賦活卵の各々から単離表層を調製し、アクチンフィラメントの制御因子であるアニリン蛋白質についてウエスタン解析を行ったところ、表層に局在するアニリンは、減数分裂の再開、進行に伴ってその量が著しく増加し、電気泳動の移動度が減少することまた、賦活後には、移動度の増加が起こることが示された。(2)卵抽出における星状体形成の誘起は、分裂期に停止した未受精卵抽出液に精子を添加することで再現性よくなされることが確認された。これらの結果に基づいて、星状体を含む卵抽出液中で賦活卵の単離表層をインキュベートした後に、卵抽出液から表層を回収し、表層のアニリンにどのような変化がもたらされるかを現在解析中である。
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