研究課題
挑戦的萌芽研究
種々のストレスに対する抵抗性が上昇したキイロショウジョウバエGS変異体を同定した。例えば、4℃、24時間という低温ストレスによってコントロール幼虫の生存率が15%に対して、この変異体では100%の生存率を示す。このゲノム変異箇所を調べた結果、out at first (oaf)という機能未知遺伝子内にGSベクターか挿入された変異体であることが判明した。予備実験の結果、本研究で用いているバランサーショウジョウバエとのヘテロ接合oaf変異体ではimd発現が上昇していることを確認した。このimd発現上昇の影響下に抗菌ペプチド遺伝子発現が活性化し、こうした自然免疫活性が高まったoaf変異体ではストレス環境下でも病原菌に対する抵抗性が高く生存率も上昇するのではないか、という仮説の基に解析を進めてきた。実験では、グラム陰性菌Enterobactor cloacaeを幼虫に注射し、その後の生存率を測定した。その結果、コントロール幼虫に比べoaf変異体では有意に死亡率が低下した。したがって、このoafヘテロ接合変異体では、imd発現上昇を介してグラム陰性菌に対する抵抗性が上昇したものと解釈できる。さらに、oafの詳細な生理的解析を進めるため、UAS-oaf系統を作出した。このUAS-oaf系統と2種類のGal4系統を用いてoafの強制発現を行い、各種条件下での生存率へのoafの効果を調べた。中枢神経系での発現をドライブするelav-Gal4と血球・脂肪体での発現をドライブするC564-Gal4系統を用いて強制発現を行ったF1幼虫の生存率を調べたが、ストレス条件下でも非ストレス条件下でも生存率への有意な変化は生じなかった。しかしながら、後者のUAS-oaf,C564-Gal4でのoaf強制発現系統では、コントロール系統に比べ高温ストレス条件下でのimdの発現上昇が有意に低下していた。これらの結果は、当初の予想通り、oafが直接的あるいは間接的にimdの発現制御に関与していることを強く示唆する結果と解釈される。今後、さらに種々のGal4系統による強制発現を行い、幼虫と併せて成虫においてもフェノタイプの解析を進める予定である。
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