研究概要 |
ATPは生命エネルギーの通貨と言われ、多くの酵素がATPをエネルギー源あるいはリン酸化の基質として利用している。我々はポリリン酸(polyP)を利用してグルコースをリン酸化する酵素(polyP-GK)を発見し、その立体構造を解明した。本研究ではATPを利用するグルコキナーゼ(ATP-GK)を改変し、polyPを利用できる様にする分子改変に挑戦した。1,ATP-GKの触媒部位周辺の塩基性のアミノ酸が比較的少ないため、polyPとの親和性が低い可能性がある。そこで、触媒部位の入り口のAsp302をLysに置換したがpolyPを利用できるようにはならなかった。2,ATP-GKのC末端に別酵素のpolyp結合ドメインを挿入し、polyPに対し親和性の高い融合タンパク質をつくった。しかし、この融合タンパク質はATPによる酵素活性は検出できたが、polyPを利用できるようにはならなかった。3,polyP-GKの触媒部位の構造に比べ、ATP-GKのリン酸結合部位が柔軟性を欠くことから、構造が不安定なpolyPとの親和性が低い可能性がある。リン酸結合部位の柔軟性を高めるため、Ala261のGlyへの置換及びGlyの挿入を行なった。しかし、その両方の酵素にグルコキナーゼ自体の酵素活性が消失した。以上の結果より、ATPの触媒部位への結合による構造変化(アロステリック活性化)が起こる酵素では、polyPを利用させることが困難であることが考えられる。しかし、アロステリック活性化を示さないタイプのATP依存酵素を使えば、潜在的にpolyPも利用できる可能性があると考えられた。
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