研究概要 |
遠隔位にメチル分岐を有する脂肪酸やアルコール類に対する新規なキラル識別試薬を創製し、それら誘導体の順相系での分離法の確立を目的とした。本年度は、9位に芳香族環(phenyl,2-methoxy-phenyl,2-benzoxazolylおよび2-naphth[2,3-dloxazolyl)10位に誘導体化用宮能基(-CO_2HおよびNH_2)を有する9,10-ethanoanthracene化合物を調製することを目標として、以下の研究を進めた。 1.Anthraceneと1,3-diacetyl-2,3-dihydrol H-imidazoleとのDiels-Alder反応後、生成物を酸加水分解し、cis-ジアミンを調製した。一方のアミノ基を2,3-naphthalimidoに誘導化すると残りのアミノ基がイミドのカルボニル基を攻撃し、脱水閉環し当初目指した目的物は得られなった。 2.Anthraceneとmethyl 3-(2-methoxy)phenyl-2-propynoateとのDiels-Alder反応、加水分解を経て9,10-ethenoanthraceneのカルボン酸を得、接触水素添加により重なり型配置の試薬を調製した。1-phenylethanolおよび1-phenylethylamineとのジアステレオマー誘導体はシリカゲルTLC上で完全に分離した。NMR分析に供した結果、基質のプロトンは対面する芳香族環の影響を受け相対配置の解析が容易であった。 3.Anthraceneとdiethyl acetylenedicarboxylateとのDiels-Alder反応生成物から、9位に2-benzoxazolylおよび2-naphth[2,3-d]oxazolylを、10位に-CO_2HおよびNH_2を有するcis配置の試薬を調製した。Isopropyl alcoholとのエステルの等価なジメチル基はそれぞれδ1.12,1.00;0.81,0.48(in CDCl_3)に検出された。α-キラルアルコールおよびアミンのジアステレオマー誘導体はシリカゲルTLC上で完全に分離した。キラル誘導体化試薬の新規骨格として優れていることが証明された。
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