研究概要 |
マンモソームを介した細胞間での遺伝子のやり取りの可能性を探るために,ウシマンモソームを培養下のNIH-3T3繊維芽細胞に添加して一定期間インキュベートした。細胞を十分洗浄後,RNAを抽出し,乳汁関連遺伝子(αs1-casein,αs2-casein,β-casein,β-lactoglobulin)に対する特異プライマーを用いてRT-PCRを実施した。調べたいずれのRNAも増幅されたことから,マンモソームを介して細胞への遺伝子移入の可能性が強く示唆された。また消化管内での取り込みを想定し,乳汁を酸性条件下で一定期間インキュベートした後,超遠心分離法によりマンモソームを調製し,引き続いてRNAを調製したところ,未処理サンプルと同程度のRNAが抽出された。さらに含まれるmRNA(αs1-casein,β-casein,β-lactoglobulin)およびmiRNA(miR-93,miR-101,miR-150)量をリアルタイム定量RT-PCR法あるいは半定量的RT-PCR法により測定したところ,酸処理と未処理群間で有意な差が認められなかったことから,マンモソームは腸管内でも比較的安定に存在出来る可能性が強く示唆された。 またマンモソームに内包されるmRNAのうちαs1-casein,β-caseinはin vitroで翻訳されることも併せて明らかとなった。さらに予備的実験ながら,MFG-E8ノックアウトマウスの乳汁には野生型マウスと同程度のマンモソームRNAが含まれることも明らかとなった。
|