研究概要 |
本研究ではまず、vortex flow、すなわち(1)反応の溶液の撹拌方向の力学トポロジーに対応して右旋性、左旋性集積を起こし、さらに(2)ターゲット反応を触媒する能力を持つ、アキラルな低分子モノマーユニットの設計、合成、評価が必要である。集積型会合状態をとり、かつ不斉配位子として不斉触媒のコンポーネントとなりうる分子の探索研究にまず着手した。検討の結果、多様な水素結合ネットワークを形成でき、希土類金属との錯形成により不斉触媒として種々の触媒的不斉反応を促進する光学活性アミド型配位子が溶媒依存的なヘテロキラル集積をとることが明らかとなった。同様に、アキラルなアミド配位子も非常に強い集積能を示す事が明らかとなった。そこで、このアミド型配位子の集積能により、力学トポロジーによる右旋性、左旋性型集積の是非を評価する反応系の構築を行った。そのターゲット反応として現在触媒化学的、産業化学的にも大きな注目を集めているanti選択的触媒的不斉ニトロアルドール反応を設定した。モノマーユニットの触媒活性部位として、希土類金属アルコキシドあるいはフェノキシドを第一選択とした。希土類金属の多様な配位数、配位形式、及び配位子交換速度の速さは、モノマーの集積時における構造変化に希土類金属の錯形成部位が柔軟に対応し、スムーズな集積化、集積可逆性、さらに集積状態における希土類錯体形成に非常に有利に働くスマートな設計であるといえる。種々検討の結果、アミド配位子を擁するNd/Naヘテロバイメタリック触媒が集積型不均一触媒として機能することがわかった。ICP,HRMS,EXAFSによる本触媒の包括的解析により、Nd,Naの両金属がアミド型配位子を介して規則的に集積していることが強く示唆された。現在、アキラルなアミド配位子を用いてvortex flowのトポロジーによって右旋性・左旋性集積型触媒の創りわけと反応活性評価を行っている。
|