研究課題
挑戦的萌芽研究
ヒト不妊症や習慣流産は多因子疾患であり、種々の生活習慣病と同様に後天性の環境因子とともに、先天性の遺伝因子の影響があると考えられている。第1減数分裂前期のイベント(姉妹染色体間の合着、相同染色体間の対合、組換え)は減数分裂における染色体の正しい分配に重要であることが知られている。これらの現象に関わる遺伝子のノックアウトマウスでは雄は無精子症、メスは卵の染色体異数性をきたし、ヒトの習慣流産に類似の表現型を呈する。本研究で解析した症例は近親婚(いとこ婚)の兄妹例で、男性は無精子症による不妊症、女性は習慣流産の表現型を呈した。この習慣流産の女性はパートナーとともに染色体所見は正常であるが、その流産胎児の染色体所見は毎回異なる染色体のトリソミーを繰り返しており、第1減数分裂前期に機能する遺伝子異常の劣性変異の存在が示唆された。本症例の不妊症・習慣流産の原因遺伝子を同定すべく、マイクロアレイを用いたゲノムワイドのSNP解析を行い、原因遺伝子座位のホモ接合性マッピングをおこなった。その結果、予想通り、全ゲノムの約1/16の領域でSNPは連続してホモを呈していた。このホモ領域に位置する、既知の第1減数分裂前期に特異的に発現する遺伝子3つ(HORMAD1, STAG3, MSH5)に関してサンガー・シークエンス法にて変異のスクリーニングを行ったが、遺伝子変異は同定できなかった。今後は、エクソーム解析をおこなう必要があると考えられた。
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