研究概要 |
近年、histone deacetylase (HDAC) familyのHDAC6が、がんの発生・進呈、あるいは治療の標的分子として注目を集めている。他のHDACsが核内でクロマチン修飾機構に働くのに対して、HDAC6は細胞質内で標的蛋白の脱アセチル化を介して、(1)細胞骨格分子の再構成、(2)aggresomeにおける異常蛋白質/RNAの運搬・refolding/degradationの機構に関与している。本研究課題では、NACC1-HDAC6システム系の詳細な解析により、以下のことを明らかにしたい。 1) NACC1-HDAC6の機能発現に係る、sumoylation/acetylationスイッチ機構の解明 2) NACC1-HDAC6系の抑制による、ストレス性蛋白誘導抑制型の新規がん治療法の開発 結果:NACC1-HDAC6の相互作用を,明らかにしNACC1のK167およびSUMO interacting motifがnuclear bodyの形成に重要であることを明らかにした.しかしこれらの結合様式はHDAC6とNACC1の相互作用には影響を与えなかった. 3) NACC1の発現抑制は細胞運動能・浸潤能,細胞増殖に影響を与えた.これらの現象は,HDAC6の脱アセチル化作用を介して生じているものであり,これらの相互作用の阻害剤スクリーニングをHDAC6-EGFP, NACC1-cherryのdouble transfectantを用いて行った結果6種類の候補薬物のスクリーニングに成功した. 4) この内1個では,1.83pMという極めて低濃度で浸潤・転移能を50%まで抑えることのできる運動抑制物質を同定した.
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