研究概要 |
「LHβ遺伝子にはFSHβ遺伝子と比較してDNAメチル化の影響を受けやすい原因があり、腫瘍化に伴うDNAメチル基転移酵素(DNMT)群の高発現によって転写抑制が起こる」という作業仮説を立て、CpGメチル化解析法であるメチル化特異的PCR(MSP)法および、バイサルファイトシーケンス法の2種類の方法を用いてLHβ・FSHβ遺伝子上流500bp中に存在するCpGのメチル化解析を行い、この仮説証明を試みた。1. MSP法によるCpGメチル化解析: LHβプロモーター領域に対して3組のプライマーを用いてMSP法を行った。LHβ転写開始点に近いMSP-LH1プライマー(LH CpG1, 2, 4, 5)、MSP-LH2プライマー(LH CpG 1, 2, 7, 8)、最もLHβ転写開始点より遠いMSP-LH3プライマー(LH CpG 9, 10, 12, 13)のいずれにおいても非メチル化は見られなかった。2. バイサルファイトシーケンス法によるCpGメチル化解析:シーケンス解析は、シーケンサーにより自動判別された配列をもとに行い、自動判別不能部位については解析データをSequence Scanner Version 1.0(Applied Biosystems社)を用いて表示・拡大し読み取ったものを使用した。転写因子Egr-1結合部位と重なるLH-CpG3, 4, 5はメチル化の比率が高い傾向にあり、これらのメチル化状態とLHβ発現には関係がないように考えられた。その他のCpGにおいてもメチル化・非メチルの混在が見られたが、転写開始領域に非常に近いLH-CpG1,2がメチル化・非メチル化の混在であった場合にLHβの発現がみられる傾向にあった。FSH-CpG1では比較的メチル化されている割合が低かった。以上の結果から、LH-CpG1, 2のDNAメチル化がLHβ遺伝子発現に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。
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