研究課題
挑戦的萌芽研究
近年、多くのがん種で癌幹細胞(あるいは腫瘍始原細胞)の存在が報告されている。がん幹細胞の機能的同定には生体における腫瘍形成能の検討が不可欠であるが、通常の免疫不全マウス(ヌードマウスやNOD/scid)では微量のがん幹細胞を移植しても、宿主免疫により拒絶され、その腫瘍形成能を検討することは困難である。今回我々は、超免疫不全NOGマウスを用い、肝細胞がんにおけるがん幹細胞の同定を試みた。Epithelial cellular adhesion molecule(EpCAM)は正常上皮に出現し、細胞接着に関与する分子で,腺がん、がん幹細胞に高発現することが知られている。例えば、乳癌においてはCD44^+/CD24^<-lo>/EpCAM^+分画、膵癌においてはCD44^+/CD24^+/EpCAM^+分画にがん幹細胞様の細胞が集積しているとの報告がある。EpCAMがヒト肝臓前駆細胞に発現していることから、我々は、EpCAMが肝細胞がんのがん幹細胞の特異的マーカーとして有用ではないかと考え、NOGマウスと単一細胞純化法を用いて検討した。肝細胞がんにおいてEpCAM^+細胞は、EpCAM^-細胞と比較し、より抵抗性(細胞生存性)、腫瘍形成能が高い特性を有し、がん幹細胞が含まれている可能性が示唆された。さらに、遺伝子操作によるEpCAM発現制御を加えた細胞の解析から、EpCAMが腫瘍形成能の増強に関わることが分かった。しかしながら、EpCAM^+細胞のEpCAM発現をノックダウンしてもその腫瘍形成能の減少がみられるが、EpCAM^-細胞のレベルにまでは至らなかったことから、EpCAM以外にも肝がん幹細胞の増殖を制御する分子機構が存在する可能性も示唆された。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Int.Immunol. 21巻
ページ: 843-858