研究課題
挑戦的萌芽研究
マイクロRNA(miRNA)は細胞の増殖や分化における遺伝子発現制御に深く関わっている。特に癌や疾患においてその発現異常が認められ、発現解析による癌診断、予後予測への応用、標的遺伝子を介した癌及び疾患の治療への応用が期待されている。癌、疾患細胞から分泌されるエキソゾームはmiRNAを含み、標的細胞に取り込まれて作用することが示されていることから、本研究は、miRNA及びそれを含んだエキソゾームが、いつ、なぜ作られ放出されるのか、どこに行き、何をしているのか、バイオマーカーとなりうるかについて明らかにし、miRNAの癌や疾患に対する核酸医薬としての臨床応用や、新たなバイオマーカーとして展開するためのエビデンスを確立することを目的として行った。その結果、エキソゾームへのmiRNA包埋効率が、細胞培養条件と初期細胞導入の際のリポソームの大きさで調節可能なこと、miR-143を導入したTHP-1マクロファージを担癌ヌードマウスに静脈注射すると、血清中にエキソゾームとして分泌され、癌細胞に取り込まれ、癌抑制効果が見られたこと、胃癌細胞株MKN45及び前立腺細胞株PC3の培養上清から精製したエキソゾームを3T3L1マウス前駆脂肪細胞に作用させると、脂肪細胞への分化誘導が阻害され、この効果が選択的に分泌されるmiRNAの作用による可能性があること、THP-1をLPSで刺激すると特定のmiRNAの産生及びエキソソーム包埋による分泌が促進されることが明らかとなった。現在、癌や疾患における選択的なmiRNAの発現とエキソゾームを介した分泌の分子機構、ならびに、エキソゾームを介したmiRNAの作用機序について解析中である。
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