研究概要 |
超高齢化の進行する鳥取県N町を対象にした生活習慣と健康に関する前向きコホート研究から、がん罹患とがんの家族歴やライフスタイルの関係について、鳥取県がん登録資料との記録照合を行い、がん家族歴を中心にした要因分析を行った。 対象は40歳から79歳までの4,309人で、平均観察期間は17.3年、Preclinical cancer effectを考慮して調査開始時から2年未満にがん罹患・死亡した人は除外して解析した。観察期間内のがんの罹患数は740人(男性456人,女性284人)、多重がんは76人(男性53人,女性23人)であった。 Cox比例ハザード分析の結果、ライフスタイルでは、喫煙習慣のみ有意ながん罹患リスクを認めたが、そのほか生き甲斐やストレスなど精神心理的な生活態度を中心にしたライフスタイルの関連性については有意な結果は得られなかった。 がん罹患にがんの家族歴が強く反映される部位としては、胃があげられた。有意ではないが、全部位、食道、女性生殖器、男性生殖器についてもがん家族歴が強く関係することが示唆された。また、多重がんの発生については、単発がん以上にがん家族歴が強く関係する傾向を認めた。 解析上の限界として5年以内に親・兄弟姉妹にがんの既往のある場合のみをがんの家族歴有りとしたことや自己申告によるバイアスを考慮するとリスクの過小評価につながるのは避けられないといえる。今後の課題として取り組んでいく必要がある。よって、以上の限界を考慮すると多重がんの発生に家族性因子の関与が無視できないことが示唆されたといえる。
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