研究課題
挑戦的萌芽研究
DNase I活性の測定は既報では、5-10時間と時間を要することから、微量な試料から迅速(5分程度)に活性を測定する方法の開発が望まれる。そこで本研究では、マイクロ流路技術を用いて、微量な血清試料におけるDNase I活性の迅速測定法の開発を試みた。マイクロ流路用のサイズスタンダードDNA(100bp、800bp:濃度2ng/ml,HITACHI)にDNase I (TaKaRa)を加え、37℃でインキュベートを行い、マイクロ流路上で電気泳動後、蛍光強度の変化を調べ、時間依存性と活性依存性について解析を行った。マイクロ流路上で泳動後、本来の長さのサイズスタンダードDNAが泳動される位置のDNA量は数分で減少し、この現象はDNase I活性量に比例することから、サイズスタンダードDNA分解に基づく蛍光の減少で、DNase I活性を高感度、迅速かつ簡便に定量化できる可能性が示唆された。マイクロ流路技術により心筋梗塞の早期診断マーカーとして有用なDNase Iの高感度迅速簡便定量が可能であることを確認した。急性心筋梗塞の診断領域に新しい、優秀な生化学的マーカー追加することになり、患者のみならず医師など医療関係者にとって大きな福音になろう。また、この測定法は極めて汎用性があり、他の核酸分解酵素一般、とくにエンドヌクレアーゼの、アイソトープを使用しない簡便・迅速な超高感度活性測定法として利用できる。したがって、多くの生化学研究者にとって極めて有用な方法となろう。さらに、我々は、DNase Iは単なる消化酵素でなく、未知な、新しい生物学的役割を担っていると考えている。いままで測定できなかったような超微量な酵素を正確に定量できるようになることから、上記の仮定を証明するため、この研究で開発された方法は有力な武器になり、DNase I研究に新しい局面の展開を期待できる。
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