研究課題
挑戦的萌芽研究
心筋疾患の病因となる細胞内タンパク輸送障害に関わる分子間の機能連関異常を解明するとともに、その異常を是正する低分子化合物をスクリーニングし治療薬のシーズを得ることを目的とした。不整脈患者に見出したKvLQT1チャネル変異による細胞内輸送障害を是正する低分子化合物をELISA法でスクリーニングする系を開発し、これを用いて約8,000件の低分子化合物をスクリーニングして32件の候補化合物を得たが、いずれの低分子化合物とも細胞内輸送障害の解除効果は小さく、COPIおよびCOPIIの機能修飾効果は認められなかった。一方、不整脈の新規原因遺伝子としてSLMAP変異を見出したため、当該変異、健常人にも認められるSLMAP多型、および正常SLMAPを用いてSCN5Aチャネルの機能変化を検討した。その結果、正常およびSLMAP多型はSCN5Aチャネルの機能を亢進するが、変異SLMAPでは亢進効果が減弱していた。また、遺伝子導入細胞を用いて、変異SLMAPはSCN5Aチャネルの細胞表面への発現性を抑制することを明らかにした。さらに、不整脈患者にSCN3B変異を見出したが、この変異もSLMAP変異と同様にSCN5Aチャネルの発現性を抑制した。これらのことは、SLMAPおよびSCN3BがSCN5Aチャネルの細胞内輸送を担うことを示唆するが、SLMAPはSCN5Aとは結合性を示さなかった。これとは別に、不整脈を合併する拡張型心筋症に見出されたZASP変異はSCN5Aの機能を抑制すること、ZASPとSCN5Aは結合性を示さないものの細胞内で複合体を形成することを明らかにした。また、ミオシン脱リン酸化酵素小サブユニットによる心肥大病態はROCK阻害剤で、LMNA変異による心不全病態はCa増感剤の投与によって改善出来ることを遺伝子改変マウスを用いてin vivoで証明した。
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