研究課題
挑戦的萌芽研究
最近我々は、マウスの腎髄質内層細いヘンレの上行脚における受動的NaCl輸送に対して、細胞外イオン化CaやCa受容体刺激薬が影響を与えることを見出した。本研究は、この特異的な細胞外イオン化CaのNaCl輸送に対する作用機序を明らかにすることを目的として実施された。細胞外イオン化Caによる受動的NaCl輸送の変化は、Cl輸送を担うClC-Klノックアウトマウスでも出現し、その効果が細胞間隙のNa輸送の抑制であることが明らかとなった。また、その効果は細胞外イオン化Caのみならず、Ca受容体刺激薬のネオマイシン等でも同様に発現することが証明された。これまで、細胞間隙のNa透過性が細胞外Caによって調節されるという事実は証明されたことがなく、本研究成果は細胞外Caの経上皮イオン輸送の中でも、細胞間隙におけるイオン輸送に対する新しい輸送調節機序として大変興味深い。細いヘンレの上行脚は、腎結石症におけるRandall's plaqueの出現部位としても知られ、今後本尿細管部位における細胞外Caと尿濃縮機構の重要コンポーネントである細胞間隙のNa輸送との関係が、腎結石症における病態・病因に関係するのではないかという新たな仮説を立てる上で重要な視点となる可能性が強く示唆されたと言える。今後、この視点からin vivoレベルや細胞間隙透過性に関与する様々な輸送蛋白質の機能解析を通じて、腎結石症の研究が発展することが期待され、その点において本研究成果は重要な意義づけをもつと考えられた。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Pediatr Nephrol 24
ページ: 609-612
10024846587
Stroke 40
ページ: 2859-2861