研究概要 |
フェニルケトン尿症などのテトラヒドロビオプテリン(BH4)関連疾患は、BH4を必要とする組織(細胞)において、十分な細胞内濃度が確保されない事が原因であり、その治療には体外(細胞外)からの補充が必須である。しかし外来性のBH4は容易に尿中に排出されるため、腎臓での排出抑制無くして有効な血中濃度の維持は不可能である。BH4は親水性物質であり、その細胞膜透過にはトランスポーターが必要である。これまでの検討では腎臓でのBH4尿中排泄は一部尿酸降下薬ベンズブロマロンにより抑制される事から、その感受性を指標としたBH4トランスポーター分子の同定を目指す。 昨年度は、(a)データベースおよび文献検索からの候補分子群の絞り込み、および(b)候補遺伝子の入手とその予備的輸送実験を行った。その結果、候補遺伝子として、ヌクレオシドトランスポーターENTs(SLC29)と有機陰イオントランスポーターOATs(SLC22)を選定し、その中でヌクレオシドトランスポーターではhENT1とhENT2、有機陰イオントランスポーターではhOAT1,hOAT3,hOAT4を候補として選択し、それらの本来持つヌクレオシドおよび有機酸の輸送活性の測定に成功し、それらのタンパク質としての機能確認に成功した。 平成21年度はこれら候補トランスポーターのビオプテリン輸送特性の解明を進めるため、アフリカツメガエル卵母細胞発現系による解析を行った。その結果hENT1,hENT2,hOAT1,hOAT3,hOAT4は、BH4とその前駆体プテリンを有意に輸送することを見いだした。これらはベンズブロマロンなどの阻害薬により著しく抑制された。この結果はビオプテリン類が個別のトランスポーターにより輸送されることを示す世界で初めての報告となり、Mol Genet Metab誌にて世界に向けて公表された。
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