研究概要 |
我々はin vitroでiPS細胞の脂肪細胞への分化誘導を世界で最初に示した(FEBS Lett. 2009; 583:1029)。さらにin vivoでヒトiPS・ES細胞由来の分化細胞が生着し、機能するかに関しては外胚葉系細胞以外ではほとんど研究されていない。今回、脂肪萎縮性糖尿病の細胞治療の実現へ向けてin vitroにおいてヒトiPS・ES細胞由来脂肪細胞の分化誘導と分化細胞のヌードマウス生体内での生着に関する検討を行った。 ヒトiPS細胞とヒトES細胞を胚様体形成を介する方法で脂肪細胞への分化誘導を行い、細胞(1×107個相当)を回収しmatrigelに懸濁し、8週齢の雄性ヌードマウスの皮下へ移植を行った。移植後、2週、4週で組織を摘出の後、パラフィン切片および凍結切片を作製し組織学的検討を行った。また2週のサンプルから核酸を抽出し脂肪細胞関連遺伝子の発現を検討した。 In vitroの分化誘導において脂肪蓄積とPPARγ2やC/EBPα, aP2, Leptin, Adiponectinなどの脂肪細胞関連遺伝子の発現を認めた。分化誘導後のヒトiPS・ES細胞を移植後2週、4週で摘出した組織においてHE染色で菲薄化した細胞質と扁平な核を持つ脂肪細胞様組織構造を認めた。さらにヒトvimentin特異的抗体を用いてヒト細胞由来であることを示した。Oil Red O染色でも脂肪滴が染色された。移植後2週の組織を摘出し、PCRにて脂肪細胞関連遺伝子であるPPARγ2, C/EBPβ, aP2, LeptinのmRNA発現が確認された。 In vitroの分化誘導においてヒトiPS・ES細胞が脂肪細胞に分化することを示し ヒトiPS・ES細胞由来脂肪細胞がin vivoにおいて生着することを初めて示した。脂肪萎縮性糖尿病に対するiPS細胞を用いた細胞治療法の開発への着実なステップとなると考えられる。
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