研究概要 |
プログラムされた細胞死として,アポトーシスとネクローシスはよく知られているが,近年新しい第3のプログラム細胞死として,オートファジーによる細胞死が注目されはじめている.摂取する蛋白の2.5倍の蛋白が生命維持に必要と言われている.そのため,廃棄される蛋白を効率よく再利用するシステムが不可欠であり,それがオートファジーである.このオートファジーが大掛かりに起こると細胞は死まで至り,このオートファジーに伴う細胞死が生物の発生過程の様々な段階に生じていることが分かりはじめている.また,飢餓状態などでアミノ酸が枯渇するとオートファジーは急速に進行し,これにより自分の体を分解自食し,生命活動により重要な蛋白を再合成することにより,生物は生き延びることができる。 本研究の目的は,生体の正常の機能や病態において重要な役割を果たしているオートファジーに注目し、表皮細胞におけるオートファジーによる新規病態を明らかにすること、並びにそこから発展し有棘細胞癌の画期的治療法を開発することにある.そのため、以下の2点を検討した。アミノ酸や亜鉛欠乏状態に見られる表皮上層の細胞死へのオートファジーの関与を明らかにすること,有棘細胞癌でのオートファジーの有無を確認し、オートファジーを強制的に誘導することにより癌細胞を殺傷する新しい観点からの治療法の開発も行うこと。その結果、アミノ酸欠乏症に認められる細胞死にオートファジーが関連する可能性が示唆された。また、オートファジーの皮膚癌への治療への応用に関しては、もうすこし検討が必要であった。 以上、計画していた研究を終了し、十分な効果が得られた。
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