研究概要 |
私たちのグループが見いだした分泌型タンパク質Tsukushiは、初期の形づくりにおいて、BMPアンタゴニストとして機能します。また、眼や脳の神経幹細胞に対しては、Wntシグナルの阻害因子としても機能することが明らかになりつつあります。 毛乳頭はWnt, BMP4, Shhなど様々な因子を分泌して細胞の増殖・分化を制御していますが、休止期を維持する分子メカニズムは不明です。Tsukushiは発生初期には毛乳頭に強く発現しています。成体マウスのバルジ領域マーカーとしてNestinは使われていますが、nestin-GFPを用いたTsukushiとの2重染色により、Tsukushiがバルジ領域に発現していることが明らかになりました。今後は、毛の幹細胞の増殖制御にTsukushiがどのシグナルカスケードに関与しているか調べる予定です。 皮膚を傷つけるとWntシグナル経路が活性化されることが知られていますので、皮膚を傷つけ、その再生を調べることは、毛髪の発生・再生のよいモデルとなります。今後は、この傷の修復時に、Wntシグナル阻害因子であるTsukushiを欠損するマウスと野生型またはヘテロマウスにおいて、違いが生じるか観察します。もし、Tsukushiを欠損するマウスにおいて、毛包の数が増加していたならば、Tsukushiが毛包の幹細胞に対してニッチ分子として機能することが示唆されます。
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