研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究の目的は、統合失調症患者の皮膚検体から線維芽細胞を採取して継代培養したのち多能性幹細胞へと誘導し、統合失調症特異的幹細胞を作出すること、そして、神経幹細胞やドパミン神経へと分化させ、その動態を調査することで統合失調症の『神経幹細胞機能不全仮説』を検証することにある。平成22年度における進捗を以下に示す。【対象の選定】DSM-IV-TRの診断基準に基づき統合失調症と診断され、浜松医科大学附属病院精神神経科外来を受診中の成人患者を対象に、研究の目的と方法、予想される結果について患者本人及び保護者に書面を用いて説明し研究への協力を求めた。平成22年3月末の時点でも、患者本人と保護者の両者から同意が得られたケースがなく、残念ながら皮膚検体採取に至っていない。今後、引き続き研究への協力を募る予定である。【iPS細胞からセロトニン神経への誘導】統合失調症の病態生理にあずかるセロトニン神経系の関与とその分子基盤を明らかにするためには、統合失調症患者由来iPS細胞よりセロトニン神経を調製し、その機能障害を検討することが一つの方法として考えられる。しかし、iPS細胞または胚性幹細胞からセロトニン神経へと分化させる技術はいまだ確立されていない。そこで、平成22年度は、マウス線維芽細胞よりiPS細胞を得た後に、それをセロトニン神経に分化させる方法を検討した。BALB/cマウス胎仔脳軟膜由来の線維芽細胞に、常法によりOct3/4、Sox2、Klf4をそれぞれ発現するよう調製したレトロウイルスを感染させ、LIF添加培地においてiPS細胞を樹立した。ついで、マウスiPS細胞を独自の間質細胞上に播種し、その2週間後に得られた神経幹細胞塊を分離、さらに、ShhとFGF8添加培地中で1週間培養を続けたものに、リポフェクション法によりLmxlbを強制発現させたところ、セロトニンの産生が認められ、セロトニン神経への分化が確認された。本研究の結果から、マウスiPS細胞からセロトニン神経への分化誘導が十分可能であることが示唆される。この技術をヒトiPS細胞で試みることにより、統合失調症患者皮膚由来のiPS細胞からのセロトニン神経作製が可能となることが推測される。今後、セロトニン神経の一層効率的な分化誘導を行うために、セロトニン神経のマーカーであるPet1の発現をさらに高める方法を検討する必要があると考えられた。
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