研究概要 |
研究目的として以下の5項目をあげ、研究を実施した:1.FABP7躁うつ病、FABP5,3と機能性精神障害(統合失調症および躁うつ病)との遺伝解析,2.FABP5,3の機能性精神障害死後脳における遺伝子発現解析,3.Fabp7ノックアウトマウスの情動関連表現型の解析,4.ヒト末梢血におけるFABP7,5,3の遺伝子発現レベルの解析(正常群、未服薬の統合失調症群および気分障害群),5.胎児期マウスに種々の不飽和脂肪酸含量食餌を与えたとき、成体脳でのFabp7,5,3の発現解析および行動解析。1.については、FABP7と躁うつ病の関連は認めたが、FABP5は遺伝解析に使える多型が存在せず解析が不可能であった。FABP3はどちらの疾患にも関連していなかった。2.については、FABP5は脳発達期に多く発現し、両疾患の死後脳で発現が上昇していた。 これは脳発達期の脂肪酸代謝の代償的変化と推察される。一方、FABP3は成体脳での発現が多く、死後脳でも発現変化がなかった。3.いろいろなテストバッテリーのうち、オープンフィールドテストで中央領域にいる時間が短く、不安の亢進が示唆された。4。末梢血ではFABP5 mRNAのみ測定可能であった。死後脳とは逆に、統合失調症群および気分障害群で発現低下が認められた。これも持続的な脂肪酸代謝の異常を反映しているものと判断された。5.発現解析では、不飽和脂肪酸欠乏食を食べさせたマウス脳で、ヒト精神疾患死後脳と同様Fabp7,5の発現上昇が認められた。行動上ははっきりした異常は見られなかったが、覚醒剤に対する反応性が亢進しており、ヒトのARMS(At Risk Mental State)の状態と考えられ、興味深いと思われる
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