生化学的カスケードネットワークの解析による統合失調症研究

• 研究課題/領域番号: 21659279
• 研究種目: 挑戦的萌芽研究
• 配分区分: 補助金
• 研究分野: 精神神経科学
• 研究機関: 財団法人東京都医学研究機構
• 研究代表者: 糸川 昌成 財団法人東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 参事研究員 (40332324)
• 研究期間 (年度): 2009 – 2010
• 研究課題ステータス: 完了 (2010年度)
• 配分額: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円); 2010年度: 1,200千円 (直接経費: 1,200千円); 2009年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
• キーワード: グリオキサラーゼ代謝 / 代謝ネットワーク / カルボニルストレス性統合失調症 / 生化学プロファイル / バイオマーカー / グルタチオン / 亜鉛 / 葉酸 / ホモシステイン / 統合失調症 / 終末糖化産物

研究概要

グリオキサラーゼ代謝と相互に関連する代謝ネットワーク分子群の生化学プロファイルから、主成分分析を行った結果、終末糖化産物(AGEs)の消去系として機能することが知られる分泌型AGE受容体(esRAGE)がカルボニルストレス性統合失調症の主成分因子として抽出された。統合失調症105名、健常者81名についてesRAGEを定量したところ、患者群の36名(34.3%)にesRAGE低下が認められた。一方、健常者群でのesRAGE低下は11名(13.6%)であった(P=0.001,OR=3.3,95%CI=1.6-7.0)。また、esRAGEの低下は、GLO1変異型の症例に比べて野生型の症例において顕著であった(P<0.05)。さらに、esRAGE低下を認めた症例での遺伝子変異を疑い、esRAGEをコードするAGERに関してresequenceを実施した結果、esRAGEの発現と関連するvariantを同定した。本研究によって、およそ15%の統合失調症にペントシジン蓄積・ビタミンB6低下・esRAGE低下を認め、その遺伝的要因として、GL01とAGER変異が関連することを明らかにした。esRAGEはスプライシングアイソフォームとして産生されるが、AGERのexon/intron junctionにあるvariantが有意なesRAGE低下と関連したことから、esRAGE低下に遺伝的要因が関与することが示唆された。また、esRAGE低下は、GL01変異症例に比べ、野生型症例でより顕著であったことから、GL01野生型のカルボニルストレス性統合失調症の要因の一部にesRAGEの低下がより関与していると考えられた。さらに、ペントシジン蓄積・ビタミンB6低下・esRAGE低下を伴う症例とペントシジン正常・ビタミンB6正常・esRAGE正常の症例とを比較すると、前者において、発症年齢の若年化、入院期間の長期化、抗精神病薬投与量の増加が認められた。このことは、ペントシジン、ビタミンB6に加え、esRAGEが予後予測など、バイオマーカーとしての臨床的有用性が示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Pyridoxamine ; a new medication for psychiatric disorders. (2011)
  • 著者名/発表者名: Itokawa M, Arai M, Miyata T.
  • 雑誌名: IMARS Highlight 巻: 6(2) ページ: 5-6
  • 査読あり
• [雑誌論文] Enhanced Carbonyl Stress in a Subpopulation of Schizophrenia. (2010)
  • 著者名/発表者名: Arai M, Yuzawa H, Nohara I, Ohnishi T, Obata N, Iwayama Y, Haga S, Toyota T, Ujike H, Arai M, Ichikawa T, Nishida A, Tanaka Y, Furukawa A, Aikawa Y, Kuroda O, Niizato K, Izawa R, Nakamura K, Mori N, Matsuzawa D, Hashimoto K, Iyo M, Sora I, Matsushita M, Okazaki Y, Yoshikawa T, Miyata T, Itokawa M.
  • 雑誌名: Arch Gene Psychiatry 巻: 67 ページ: 589-597
  • NAID: 130005395360
  • 査読あり
• [雑誌論文] The adenosine A2A receptor is associated with methamphetamine dependence/psychosis in the Japanese population. (2010)
  • 著者名/発表者名: Kobayashi H, Ujike H, Iwata N, Inada T, Yamada M, Sekine Y, Uchimura N, Iyo M, Ozaki N, Itokawa M, Sora I.
  • 雑誌名: Behav Brain Funct 巻: 6 ページ: 50-50
  • 査読あり
• [雑誌論文] AGEs : ことばのカルテ (2010)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成
  • 雑誌名: Medical Tribune 巻: 43(12) ページ: 247-247
• [雑誌論文] AGEs:ことばのカルテ (2010)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成
  • 雑誌名: Medical Tribune vol43 No12 ページ: 247-247
• [雑誌論文] 進化による疾病の変化. 精神疾患(ストレス) (2009)
  • 著者名/発表者名: 新井誠, 糸川昌成, 吉川武男
  • 雑誌名: 成人病と生活習慣病 39(12) ページ: 1345-1350
• [雑誌論文] Enhanced Carbonyl Stress in a Subpopulation of Schizophrenia
  • 著者名/発表者名: Arai M, Yuzawa H, Nohara I, Ohnishi T, Obata N, Iwayama Y, Haga S, Toyota T, Ujike H, Arai M, Ichikawa T, Nishida A, Tanaka Y, Furukawa A, Aikawa Y, Kuroda O, Niizato K, Izawa R, Nakamura K, Mori N, Matsuzawa D, Hashimoto K, Iyo M, Sora I, Matsushita_M, Okazaki Y, Yoshikawa T, Miyata T, Itokawa M.
  • 雑誌名: Arch Gene Psychiatry (in press)
  • NAID: 130005395360
  • 査読あり
• [雑誌論文] グルタミン酸関連遺伝子と統合失調症
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成, 市川智恵, 新井誠
  • 雑誌名: 専門医のための精神科臨床リュミエール (印刷中)
• [学会発表] カルボニルストレス性統合失調症の病態および治療法の解明 (2011)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成
  • 学会等名: 第7回統合失調症研究会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2011-02-05
• [学会発表] カルボニルストレスを呈する統合失調症の代謝制御に関する研究 (2010)
  • 著者名/発表者名: 新井誠, 市川智恵, 宮下光弘, 西田淳志, 新井麻友美, 小幡菜々子, 野原泉, 岡崎祐士, 大西哲生, 豊田倫子, 吉川武男, 有波忠雄, 氏家寛, 久島周, 尾崎紀夫, 福本素由乙, 橋本亮太, 小池進介, 滝沢龍, 笠井清登, 宮田敏男, 渡邉琢夫, 山本博, 糸川昌成
  • 学会等名: 第32回日本生物学的精神医学会
  • 発表場所: 北九州(福岡県)
  • 年月日: 2010-10-08
• [学会発表] 統合失調症の病態に関わる代謝カスケード遺伝子群の resequence 解析 (2010)
  • 著者名/発表者名: 小幡菜々子, 新井誠, 新井麻友美, 市川智恵, 田中陽子, 野原泉, 吉川武男, 岡崎祐士, 系川昌成
  • 学会等名: 第5回日本統合失調症学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2010-03-26
• [学会発表] 統合失調症患者におけるミトコンドリアDNAの遺伝子解析 (2010)
  • 著者名/発表者名: 市川智恵, 新井誠, 野原泉, 小幡菜々子, 新井麻友美, 由中陽子, 新里和弘, 岡崎祐士, 土井永史, 糸川昌成
  • 学会等名: 第5回日本統合失調症学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2010-03-26
• [学会発表] 統合失調症の病態におけるカルボニルストレス代謝制御に関する研究 (2010)
  • 著者名/発表者名: 新井誠, 糸川昌成, 吉川武男, 有波忠雄, 氏家寛, 尾崎紀夫, 橋本亮太, 笠井清登, 橋本謙二, 森則夫, 岩田仲生, 岡崎祐士, 宮田敏男
  • 学会等名: 第5回日本統合失調症学会
  • 発表場所: 福岡
  • 年月日: 2010-03-26
• [学会発表] カルボニルストレス性統合失調症の病態研究 (2010)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成, 新井誠, 湯澤公子, 市川智恵, 大西哲生, 豊田倫子, 伊豫雅臣, 松澤大輔, 橋本謙二, 中村和彦, 森則夫, 福本素由乙, 橋本亮太, 久島周, 尾崎紀夫, 小池進介, 滝沢龍, 笠井清登, 岩田仲生, 有波忠雄, 石黒浩毅, 今村明, 稲田俊也, 氏家寛, 岡崎祐士, 吉川武男, 宮田敏男
  • 学会等名: 第17回日本精神・行動遺伝医学会
  • 発表場所: 高槻
  • 年月日: 2010-02-11
• [学会発表] カルボニルストレス性統合失調症の診断と治療の最先端 (2009)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成, 新井誠, 市川智恵, 西田淳志, 大西哲生, 豊田倫子, 氏家寛, 岡崎祐士, 吉川武男, 宮田敏男
  • 学会等名: 第19回日本メイラード学会学術総会
  • 発表場所: 金沢
  • 年月日: 2009-11-20
• [学会発表] カルボニルストレス性統合失調症の病態に関する研究 (2009)
  • 著者名/発表者名: 新井誠, 市川智恵, 西田淳志, 大西哲生, 豊田倫子, 氏家寛, 岡崎祐士, 吉川武男, 宮田敏男, 糸川昌成
  • 学会等名: 第19回日本メイラード学会学術総会
  • 発表場所: 金沢
  • 年月日: 2009-11-20
• [学会発表] カルボニルストレス性統合失調症の病態に関する研究 (2009)
  • 著者名/発表者名: 新井誠, 湯澤公子, 小幡菜々子, 野原泉, 新井麻友美, 市川智恵, 豊田倫子, 大西哲生, 氏家寛, 曽良一郎, 岡崎祐士, 吉川武男, 宮田敏男, 糸川昌成
  • 学会等名: 第82回日本生化学会大会
  • 発表場所: 神戸
  • 年月日: 2009-10-24
• [学会発表] A novel concept of mental illness : A carbonyl stress induced schizophrenia-a glyoxalase 1 deficit pedigree with psychosis (2009)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成
  • 学会等名: 10th International Symposium on the Maillard Reaction
  • 発表場所: Cairns, Australia
  • 年月日: 2009-08-31
• [学会発表] 介入研究と並行する遺伝子解析研究 (2009)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成, 新井誠
  • 学会等名: 平成21年度厚生労働省科学研究費補助金こころの健康科学研究事業「思春期精神病理の疫学と精神疾患の早期介入方策に関する研究」第1回班会議
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2009-06-14
• [学会発表] カルボニルストレス性統合失調症の病態に関する研究 (2009)
  • 著者名/発表者名: 新井誠, 湯澤公子, 野原泉, 小幡菜々子, 羽賀誠一, 大西哲生, 豊由倫子, 氏家寛, 曽良一郎, 岡崎祐士, 吉川武男, 宮田敏男, 糸川昌成
  • 学会等名: 第31回日本生物学的精神医学会
  • 発表場所: 京都
  • 年月日: 2009-04-25
• [学会発表] 統合失調症の診断・治療法の開発 (2009)
  • 著者名/発表者名: 糸川昌成, 新井誠, 市川智恵
  • 学会等名: 第8回国際バイオフォーラム&国際バイオEXPO
  • 発表場所: 東京
• [図書] The maillard reaction : Interface between aging, nutrition and metabolism(A novel mechanism of mental illness : Carbonyl stress induced schizophrenia : A glyoxalase I deficit pedigree with psychosis.)(Thomas MC, Forbes J, eds) (2010)
  • 著者名/発表者名: Itokawa M, Arai M, Yoshikawa T, Okazaki Y, Miyata T.
  • 出版者: Cambridge : RSC Publishing