研究課題
挑戦的萌芽研究
脳内に沈着したβアミロイドタンパク質(Aβ)の生体イメージングは、アルツハイマー病(AD)の診断に有効であると考えられている。現在、Aβイメージングプローブとして^<11>Cまたは^<18>Fを標識核種とする数種のPET用放射性プローブが臨床開発されており、その有用性が報告されている。しかしながら、PET設備を有する施設は限られていることから、今後急増が予想されるAD患者の予防的診断に対応できる新たな診断法の開発が必要と考えられる。本研究では、汎用性に優れた光イメージング法によるAβの生体イメージングを目的として、BODIPYを蛍光母核とする近赤外蛍光Aβイメージングプローブの開発を行った。BODIPY骨格にフェニル、チエニルおよびフリル基などを導入した数種の誘導体を合成し、蛍光波長および量子収率を測定した。さらに近赤外領域に蛍光波長を持つ化合物に関しては、Aβ凝集体を用いたin vitro結合実験を行った。また、アミロイド前駆タンパク質を過剰発現するTg2576マウスを用いて、in vitroおよびex vivoにおけるアミロイド斑への結合性を確認した。近赤外領域に蛍光波長を有する5種類のBODIPY誘導体を合成した。Aβ凝集体を用いたin vitro結合実験において、それらのBODIPY誘導体にはいずれもAβ凝集体への結合性が認められた。Tg2576マウス脳切片を用いたin vitro蛍光染色実験において、4種類のBODIPY誘導体はアミロイド斑を明瞭に染色した。さらに、そのうち1種類の誘導体はTg2576マウスを用いたex vivo実験において、血液脳関門を透過し、マウス脳内に蓄積したアミロイド斑へ選択的に結合することを認めた。以上より、BODIPY誘導体が近赤外蛍光Aβイメージングプローブとして有効な基礎的性質を有することが示された。本検討結果は、本誘導体を基盤としたマルチモーダル分子イメージングプローブ開発が可能であることを示唆するものと考えられた。
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