研究概要 |
(目的)癌幹細胞では糖代謝活性が低下しているという仮説を設定し,蛍光標識グルコース誘導体2-NBDGを用いて,細胞内グルコースの低下した細胞群を分離し,新たな癌幹細胞の同定法を確立する.(意義)従来の癌幹細胞同定法は,CDマーカーとSP細胞の2つによって主になされてきたが,未だ癌幹細胞が見いだせていない癌腫が多数あることと,網羅的な手法であるため効率性の面で問題があった.この様な状況のなかで癌幹細胞の新規同定法を開発することは,これらの問題点を克服する可能性があるという点で大きな意義がある.(研究の進捗状況)当教室の主たる治療対象である胆道癌の細胞株を用いて,初期条件の設定を目的とした予備実験とマウス皮下移植実験を行った.(1)ソーティング精度の検証:FACSで検討を行い95%以上の目的細胞集団の分離率が得られた.(2)2-NBDGの至適濃度の検証:細胞株ごとの測定可能濃度の検討をした.(3)2-NBDG反応時間と蛍光強度の検討:40~60分以上の反応時間で蛍光強度がプラトーに達した.(4)2-NBDG反応後の保存条件による蛍光強度の変化の検討:冷却保存することで代謝・排出による蛍光強度の減弱の回避が可能であった(細胞解析から分離まで.(5)動物実験:通常培養した胆道癌細胞株を対象に蛍光強度の強弱により細胞群の分離を行い,各々の細胞群をNOD/SCIDマウスに皮下移植した,腫瘍の生着率および経時的変化について検討し、腫瘍細胞の生着率、腫瘍増殖能力に有意差は認められなかった。In vitroにおいて、分離細胞群で増殖能力の比較を行ったが差は認められなかった。現時点では、2-NBDGを用いた糖代謝活性の差のみでは癌幹細胞様細胞集団を同定することは困難と考えられた。
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