研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では、幹細胞を起点とした固形臓器の組織化過程を理解するため、申請者らが独自に確立した血管網の人為的再構成系を駆使して、肝幹細胞を起点とした肝臓組織の再構築法を開発している。平成22年度は、肝幹細胞を起点とした肝臓組織の構築過程における、血管系細胞の役割について検討した。はじめに、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)とヒト間葉系幹細胞(hMSC)を用いてヒト血管ネットワークを異所性に再構成させる技術の開発を試みた。マウス頭蓋に作製した透明な観察窓(クラニアルウインドウ)内にレトロウイルスベクターにより蛍光遺伝子を導入したEGFP-HUVECとKusabira Orange-hMSCを各々移植し、その後、顕微鏡下で観察した。その結果、移植後、1週間以内にHUVECからなるネットワーク構造が確認された。このとき、HUVECの周囲にはhMSCが多数存在していた。また、移植後3週目以降、HUVECから成る管腔構造がhMSCで覆われることを確認した。再構成されたヒト血管ネットワークは、少なくとも移植後8週目まで良好な形態を示した。次に、HUVEC-hMSCとともに未分化なヒト肝臓細胞を同時に移植し、組織構築過程を観察した。移植後4週目においてクラニアルウインドウ内の組織を観察したところ、移植細胞に由来する肝臓様組織が再構成されていることを見いだした。移植後8週目の組織についてヒト特異抗体を用いた免疫組織化学を実施したところ、多数のアルブミン陽性細胞が観察された。また、再構成されたヒト肝臓組織内において、壁細胞に裏打ちされたヒト血管内皮細胞の管腔構造が確認された。本研究において確立したヒト肝臓組織の再構成技術は、実質細胞と血管ネットワークの相互作用の解析系として有用と考えられる。
すべて 2011 2010 2009
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件)
J Biosci Bioeng.
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