研究概要 |
大腸癌スクリーニング検査として便から採取した細胞の遺伝子の変異を調べることによって信頼性の高い大腸癌スクリーニングが可能か検討する。そこで前年度では大腸癌関連遺伝子としてのK-ras(codon 12,13変異)、p-53の遺伝子2つを選択し、その遺伝子を測定することで大腸癌診断が可能であるかを検証した。18例の大腸癌手術症例について便中のK-ras(codon 12,13変異)、p-53の遺伝子2つについてを測定した。K-ras(codon 12,13変異)についての陽性率が11/18(61.1%)でありかなり有効であると考える。しかしp-53突然変異遺伝子の陽性率は2/18(11.1%)で低率であった。K-ras陽性率は33%~100%であった。またp-53は直腸癌の2例のみ検出された。右側結腸では年齢、性別、壁深達度、分化型、リンパ管侵襲・静脈侵襲・Stageには有意な差は認めず。腫瘍最大径は陽性のものが大きかった。左側結腸・直腸では右側結腸より検出率が高く、男性に多かった。腫瘍最大径は陽性のものが大きかった。18例の最大腫瘍径では陽性と陰性の境界は3.0cmであった。1. p-53は直腸癌のみで検出され、11.0%と低率であった。2. K-ras陽性率は左側結腸癌(72.7%)で高率であった。3.男性(男87.5%:女40%)で高率であった。4.年齢・分化型・リンパ管侵襲・静脈侵襲・Stageには差は認められなかった。5.最大腫瘍径3.0cm以上の腫瘍でK-ras変異が検出された。以上のことから、K-ras単独では検出率がやや低率である。またp-53は不適である。他の遺伝子マーカー(APC、BAT-26など)を検索する必要がある。(この結果は第65回日本大腸肛門病学会(浜松)にて発表した。)今年度はK-ras(codon 12,13変異)の偽陽性率、それに加えAPC遺伝子との組み合わせの可能性について検証した。現在10例について解析中である。
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