研究課題
挑戦的萌芽研究
平成22年度は、研究:胎盤における脂質-新規のシグナル伝達系としての生理的・病理的意義-として、抗炎症作用を有するω3脂肪酸の妊娠、特に早産病理における検討をした。早産の誘因として子宮内の局所炎症が重要である。魚油に含まれるEPA(エイコサペンタンエン酸)/DHA(ドコサヘキサエン酸)に代表されるω3脂肪酸(ω3)は、ω6脂肪酸であるアラキドン酸系の炎症作用を抑制する。本研究では、C57/BL6系マウスにω3合成酵素fat1を導入して、ω3を豊富に合成するようにしたトランスジェニックマウス(fat1マウス)を用い、ω3の早産予防効果を明らかにすることを目的とした。C57/BL6系のwild type(WT)マウスとfat1マウスを用いた。WTの雄とWTまたはfat1マウスの雌を交配させた後、妊娠15日に経膣的にlipopolysaccharide(LPS)(15-50μg/200μl/head)を子宮頸管内へ局注した。注射刺激による早産を否定するために生食200μlを同様に局注した。48時間以内に分娩に至った場合を早産として、WTマウスとfat1マウスの早産率を比較した。早産率は、LPS15μg投与群ではWTマウス=45%、fat1マウス=20%、LPS30μg投与群ではWTマウス=100%、fat1マウス=50%、50μg投与群では両マウスとも100%であった。fat1マウスは有意に早産しにくいことがわかった(Cochran-Armitage trend test, p=0.0004)。生食を局注されたマウスは、いずれも早産しなかった。以上より子宮頸管局所の炎症により誘発される早産は、ω3が持つ局所の抗炎症作用により回避されると考えられた。また、ω3リッチの食事や薬剤を摂取することが早産予防につながると期待された。
すべて 2011 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
日本産科婦人科学会雑誌
巻: 63 ページ: 621-621
American Journal of Reproductive Immunology 62
ページ: 90-95