研究概要 |
世界初の偏光感受型・高侵達・前眼部三次元光干渉断層計(optical coherence tomography,OCT)を開発する目的で,光源1.3μm,200x200のAライン測定を2秒で行う波長走査型光干渉断層計を組み立て,臨床応用を行った.光源側にelectro-optic polarization modulatorを,検出側にpolarization-sensitive detectorを配置し,組織の偏光特性を測定する構成とした.通常のOCT画像と偏光感受型tomography,すなわちphase retardation tomographyを同時に測定するものである.このシステムを正常ヒト篤志者にて最適化し,偏光感受型・前眼部三次元光干渉断層計撮影を行い,従来の光干渉断層計では検出困難であった強膜岬,線維柱帯,強膜角膜移行部などの検出率を検討した.また,組織内構成要素の分離検出精度を検討し,波長走査型光干渉断層計の所見と比較することにより,各組織における光干渉断層所見の特徴を分類することを試みた.さらに,角膜疾患,角膜移植後眼,円錐角膜眼,壊死性強膜炎眼,緑内障眼,濾過胞手術後眼などの各疾患眼において,角膜および強膜における複屈折(birefringence)変化を検討した.装置の深さ方向の解像度は8.3μm,スキャン速度は30,000/sである.その結果,濾過胞の水隙の上方に強い複屈折を認め,組織の線維化が生じている部位があることが示された.角膜移植後眼では,複屈折が増強している部分が炎症あるいはコラーゲンの異常なクロスリンキングが生じている部位に相当していた.強膜炎眼では,強膜の菲薄化と組織の脆弱化部分が示された.我々は本研究において,網膜と同様に前眼部における複屈折変化を捉えることにより,組織の形態変化だけでなく,組織内の繊維走行の変化や創傷治癒過程の解析,構造内要素の分離検出などを行うことを試みた.
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