研究概要 |
A群レンサ球菌の全RNAプールを作製し,ヒトのmicroRNAデータベースと相同検索を行った.その結果,3種類のヒトmicroRNA相伺体を得た,そこで.当該の3種類のA群レンサ球菌由来配列をRNA転写ベクターにそれぞれ導入し.microRNA発現ベクターを構築した(クローン#A~C).続いて,ヒト上皮細胞株へ3種類のA群レンサ球菌microRNA転写ベクターをそれぞれ導入し解析を行った microRNAクローン#Cの導入細胞では,上皮細胞株の基準1.0に対して300倍を超える炎症性サイトカインIL-1βの転写増強が認められた.microRNAクローン#Cは,ヒト細胞に炎症を惹起することが推察された.この結果は,A群レンサ球菌が感染後に宿主内で殺菌されても.漏出したmicroRNAが残存すれば,炎症を増悪させヒトに病原性を発揮する可能性を示唆している 一方で,クローン#A導入細胞ではIL-17および抗菌ペプチドLL-37の転写が促進された.すなわち,Th17系の免疫応答の誘導と抗菌ペプチドによる直接的な殺菌効果が高まることが示唆された.また.microRNAクローン#B導入細胞では,TGF-β1の転写が減少した.TGF-β1はヒト細胞表層のフィブロネクチンの発現を正に制御する.多くの細菌はヒト細胞表層のフィブロネクチンを介してヒト細胞に付着・侵入することから,#B発現細胞では細菌のヒト細胞付着が減少する可能性が考えられた.そこで,A群レンサ球菌ならびに肺炎球菌の細胞付着実験を行った.その結果,A群レンサ球菌由来の#Bクローンを発現させた細胞では,A群レンサ球菌とは異なる肺炎球菌の付着低下が顕著であった.これらの知見は,A群レンサ球菌が組織内に侵入した後,他の菌種の感染を妨げA群レンサ球菌自身が効率的に組織内増殖を果たす戦略を有する可能性を示唆している
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