研究課題
挑戦的萌芽研究
我々は欠損した骨の再建方法の確立を目指し、既に「人工マトリックスの幾何学」の原理を提案し、それに基づいて「ハニカム型βTCP」を含む多数のスカフォールドを開発し、これによって小規模の骨再建が可能であることを示してきた。平成21~22年度においては、「ハニカム型βTCP」の個々のトンネル構造を発展させて、ランダム方向に走る幾何構造体、すなわち「ランダム・トンネル型βTCP」(略称RT)を開発・製造しその有効性を動物実験と細胞培養法によって実証した。すなわち、内径0.3mm、外径0.5mmのβ-TCP製パイプを長さ1-2mmに切断し、顆粒状(これをパイプ顆粒と呼んだ)として成形し、トンネルが全方向を向くような構造体を創製することに成功した。「ランダム・トンネル型βTCP」(以下RTと呼ぶ)は、パイプ顆粒の成型体を1000℃以上に加熱して焼結することによって製造されるが、その後、パイプ顆粒をコラーゲン線維によって包摂して成型することによっても製作できた。これらのRT成型体を1辺が5-10mm、厚さ2mmのブロック状にして、12週齢WKAH系雄ラットの頭蓋骨の骨膜下にOn-lay埋植した。6週後、摘出物を脱灰し、組織学的分析を行った。その結果、埋植後6週にしてトンネル内に、血管と骨が入り込み、同時にパイプ顆粒の間隙にも骨が成長することが分かった。培養実験用にはディスク型RT(2x12mm)を用い、骨原細胞MC3T3E1を播種し、動力学的刺激を加えて培養し結果、静置培養よりも、はるかに高いアルカリフォスファターゼ活性を得ることができた。RTは、その全方向性のトンネルによって骨を必要な方向に増殖させ、しかも顆粒間の空隙が最適の骨形成空間を与えることで、骨形成の効率を最大限に増大できる人工マトリックス(スカフォールド)として極めて有用であることが証明された。
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