研究概要 |
1.本年度に実施した研究成果の具体的内容 1-1.当事者へのインタビュー 1)統合失調症を持ちながら地域で暮らす当事者8名にWHO-QOL質問紙,およびインタビューを実施した.WHO-QOLは,全体の平均が3.13±0.88であった.これは,これまで実施され他統合失調症患者を対象とした調査研究の結果よりよく,かつ一般人口よりよい結果であった 2)当事者インタビューでは,健康のために心がけていたこと,そのきっかけ,健康に気をつけたいと思う理由,入院中の看護師からされた援助で印象に残っていることをたずねた.その結果,当事者は,生活リズムを整え,睡眠を十分にとること,食事をきちんと取ること,薬をきちんと飲むこと,気分転換をうまくすることを主に心がけていた 3)自分にあった,気分転換の方法をそれぞれが持っていた 1-2.看護師へのインタビュー 1)統合失調症患者へ関わっている看護師や訪問看護師計8名へインタビューを実施した 2)看護師は,まず当事者の全体的を氛囲気から,「普段と違う」感じをサインとして心身のアセスメントを開始していた.また,心身へのアプローチをするために,その基盤としての信頼関係作りに心を砕いていた.しかしながら,精神科の看護師は,身体のな視点からのアプローチが弱く,当事者からの身体的訴えがあっても,その対応に不十分になりがちであった.また,訪問看護師は,身体への接触を控える傾向にあった 3)看護師が身体的なアプローチをすることによって,患者も自分自身の体の変化に目をむけ,体をいたわる状況が生まれていた 2.意義および重要性 本研究の意義は,地域へ暮らす当事者が,自分なりの健康管理に努めていたこと,QOLを高く評価していたこと,しかしながら入院中の看護師の関わりについて,当事者の記憶にはとどまっていないこと,実際に精神科看護師も身体へのアプローチへの意識が低く,希薄であること,精神科看護師は信頼関係を基盤に,看護師の援助に相互作用するように,当事者も身体へのケアへと意識が向くことが明らかになった.課題として,精神科看護師の精神機能への援助の偏重が考えられた.本研究では,身体性志向的な看護援助が加わることにより,精神科看護師がすでに有している優れたコミュニケーションの力を基板として,看護師として本来目指しているホリティックな援助が可能となることが示唆された点で重要であった
|