研究概要 |
転写因子ChREBPは,グルコースに応答して核内移行する。核内に移行したChREBPは,解糖系・脂肪酸合成系の調節酵素であるL-PK,ACC,FASなどの遺伝子発現を促進させる。その活性化メカニズムは,従来よりリン酸化,脱リン酸化により制御されていると考えられていた。しかし,近年になり我々は新たな結合タンパク14-3-3が新たにその活性化に深く関与していることを見出した。今回、さらに翻訳後修飾の一つであるO-GlcNAc修飾が活性化に影響を与えるかどうかを検討するとともに、Mlxの変異体を作製しその役割も合わせて再検討することを目的とした。 Mlxの変異体をHEK293に発現し、ChREBPの細胞内局在の観察を行った。また、GFP-ChREBPをHEK293あるいはHepa1,6細胞に高発現させ、低濃度と高濃度のグルコース下で培養し、GFP抗体で免疫沈降したのちSDS電気泳動を行いO-GlcNAc抗体にて修飾の解析を行った。また、O-GlcNAcaseの阻害剤(PUGNAc)を用いて、転写活性をルシフェラーゼアッセイで測定し、O-GlcNAc修飾が及ぼす影響を検討した。HEK293において、野生型Mlxとは異なり変異型MlxではChREBPの核内への移行が確認されなかった。よって、ChREBPが核内に存在する為には、Mlxは必須であると考えられる。 抗O-GlcNAc抗体を用いた解析によりChREBPは、O-GlcNAcで修飾されていることが明らかとなった。また阻害剤を用いた実験より、O-GlcNAc化が促進すればChREBPの核内への局在も増え、転写活性が増強されることが判明した。しかし、O-GlcNAc修飾のリン酸化部位への影響は見られなかった。 今後は、O-GlcNAcの修飾部位を特定し、転写因子のさらなる核内移行へのメカニズムおよびグルコース応答の反応機構を解明することを目指す。
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