研究課題
若手研究(B)
昨年度の調査結果をまとめた論文「1919-1920年代前半における読書を通じてのパウル・クレーとアジア・オリエントの関係」(『美學美術史論集千足伸行教授退任記念』19輯、2011年、219-233頁)で、クレーのアジア・オリエント関連文献の蒐集期には、1909年~第1次世界大戦期に第1次ピーク、1919~24年に第2次ピークがあることを取り上げ、その読書体験の分析を行った。本年度では、この第2次ピークにクレーがアジア・オリエントに関する作品をやはり多く制作していることに注目し、関連作品の精査を行った。昨年度から調査を行っていた作品《中国風の絵》(1923年)が、本年度の調査過程で《中国風の絵II》(1923年)ともとは1つの作品であり、クレーが制作のある時点で縦方向に2つに切断したという可能性が非常に高いことが発見された。そこで本年度は、ベルンのパウル・クレー・センターと宮城県美術館でこれらの作品についての情報収集と、作品調査を中心に行った。また、ヴァイマール・バウハウスにおけるアジア・オリエントの関心や当時のドイツと中国やインドとの政治的関係を明らかにするために、ベルリンのバウハウス・アーカイヴやヴァイマールのテューリンゲン州立中央文書館等で資料調査を行った。その調査結果を、美術史学会例会(於東京藝術大学)で「パウル・クレー作《中国風の絵》(1923)と《中国風の絵II》(1923)の制作背景について」として発表した。本発表では両作品やインドに関する作品を中心に、クレーがヴァイマール・バウハウスの当時の環境にあって、クレーがアジア・オリエントの芸術や社会に積極的に接近し、その関心が作品の源泉となり得たこと、そしてその関心は、画材や制作過程についての取り組みにまでも及んだということを明らかにした。これにより、クレーとアジア・オリエントへの関心とその作品制作への反映に関して従来の研究で取り上げられなかった局面が新たに実証され、クレー研究に新たな地平を開いたと考える。
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立命館言語文化研究
巻: 24巻1号(掲載決定)(頁未定)
美學美術史論集、千足伸行教授退任記念
巻: 19輯 ページ: 219-233
110008672143
ユリイカ
巻: 43巻4号 ページ: 103-141
『パウル・クレー東洋への夢』展覧会カタログ
http://klee.exhn.jp/times/interview/index06.html
http://klee.exhn.jp/times/interview/index07.html