本研究では、博物館において開催される戦争展示が、どのような意図と内容を持ち、自治体および地域社会にどのような意味や影響をもたらし得るのかということについて、展示内容の意思決定に関わる学芸員の役割を射程に収めながら、具体的な事例に基づく検証を行った。その結果、さまざまな政治的アクターが関わりながら決定された戦争展示においては、その論争的性格ゆえに、来館者の理解を前提としたコミュニケーションが想定されていない現状が明らかとなり、戦争展示のメッセージの「宛先」や受け手の存在を想定したコミュニケーションを構築していくことの課題が浮き彫りになった。
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