研究概要 |
本研究では時間遅れをもつ方程式の解の漸近的性質とスペクトル解析に関する研究を行い,次の主要な研究成果を得ることができた。(1)特定の項にのみ時間遅れをもつ線形積分微分方程式系や線形差分方程式系の零解の具体的な漸近安定条件を導出した。特に,対角成分に時間遅れをもつ場合,ある条件の下でパラメータを変化させると,零解は漸近安定と不安定をくり返しながら,最終的には不安定になるstability switches現象が生じることを明らかにした。(2)無限の時間遅れをもつ線形Volterra差分方程式に対する解の漸近公式を得るために,相空間における中心-不安定部分空間上での具体的な射影表現を確立した。応用として,絶対値が1の特性根から生じる漸近周期解を簡単に計算できることを示した。
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