研究課題
若手研究(B)
平成22年度は前年度に得られた研究成果をもとに、以下の3点の研究を行いました。(1)Thermococcus kodakarensis(Tk)TrmJの生体内での機能を調べる:野生株とTk-TrmJ遺伝子破壊株(ΔTrmJ)から固相化プローブ法により、リジンtRNAをそれぞれ単離しました。次に、クチノ法により単離した基質リジンtRNAを用いて、tRNA中のシトシン32番目のリボース2-0'のメチル基(Cm32)の有無を決めようとしました。しかしながら、単離したリジンtRNAの純度が低いためあるいはリジンtRNA自体を単離できなかったため、Cm32の存在を決定することができませんでした。(2)Tk TrmJの生化学的解析:ΔTrmJから単離したリジンtRNAを基質にS-アデノシルメチオニン(S-AdoMet)をメチル基供与体としてTrmJの活性測定を行いましたが、メチル基転移活性を確認することができませんでした。このことは、使用した基質がリジンtRNAでなかったことと一致しています。(3)Tk TrmJとS-AdoMet複合体のX線結晶構造解析:以前に得られたTrmJの結晶化条件を最適化しましたが、良質の結晶を作成することに至りませんでした。そこで、TrmJの構造予測を行ったところ、TrmJが触媒ドメインとC末端ドメインの二つのドメインで構成されていることが予測されました。この情報を基に、TrmJのC末端ドメインを欠損させたΔC-TrmJの結晶を作成し、3.0A分解能のΔC-TrmJの結晶構造を決定しました。既知のTrmHとΔC-TrmJの結晶構造を比較した結果、両酵素は非常によく似ていることから、TrmJのC末端ドメインが基質の部位特異性を決定していることが示唆されました。今後は、TrmJの生化学的解析を確立することで、TrmJの基質認識機構を明らかにできる見込みです。
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