研究概要 |
ブドウ'巨峰'について、満開後2週時またはベレゾーン期にオゾン濃度150ppb・5日間の曝露を行った。時期によって傾向は異なるものの、おおむね曝露個体では下位節位葉に可視被害が現れ、光合成活性、根重が低下した。特に満開後2週曝露では根量の低下が著しかった。果汁糖度は前年の結果と異なり本年は低下しなかった。13C安定同位体により解析したところ、オゾン曝露により根への光合成産物の分配量が減少した。ブドウ挿し木苗について、動画記録装置を用いて、またはスンプ法など数種の方法により、気孔観察を行ったが、気孔の反応が個々により異なり、オゾンの影響を確認することが困難であった。そこで、葉の生理活性から葉の状態を把握するとともに、気孔コンダクタンス、葉の可視被害を計測し、オゾン耐性を栽培的・生理的な側面から検討した結果、ブドウでは(i)気孔コンダクタンスが高く,可視障害面積も大きいグループ(ii)気孔コンダクタンスが低く,可視障害面積の小さいグループ(iii)気孔コンダクタンスは高いが,可視障害面積の小さいグループ,が確認でき、品種間差がある可能性が考えられた。イチジク,モモの着果樹について、果実成熟期にオゾン濃度150ppb・5日間の曝露処理を行った所、ブドウ同様に光合成活性、根量が低下した。果実重・果汁糖度ともに非曝露区よりも低下し、ブドウとは異なる結果であった。 以上のことから、オゾン曝露は、光合成活性を低下させ、地下部成長量を抑制した。永年作物である果樹の根量の低下は、将来において、樹体の乾物生産力を低下させ、収量に影響する可能性がある。また、糖度といった果実の品質にかかわる部分にも影響を及ぼしている可能性が考えられる。オゾン曝露は、高品質・収量安定・樹冠拡大に潜在的なダメージを与えており、経年的な検討が重要であると考えられる。
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