配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2010年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2009年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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研究概要 |
昆虫生理機能の中から昆虫特異的な殺虫剤作用点を新たに見いだすことで,選択毒性の高い安全な新薬を創製することが可能であると考えられる.本研究は,害虫の解毒酵素,特に一昆虫種が100種程度の分子種を有し,そのほとんどの機能が明らかになっていないシトクロムP450酸化酵素に重点を置いて,殺虫剤機能を高める化合物,いわゆる共力剤の開発に結びつくデータを蓄積することを目的として行った.感染症の重要な媒介昆虫であるネッタイイエカ,ネッタイシマカおよびヒトスジシマカを実験材料とし,殺虫剤抵抗性機構の解明を試みた.殺虫剤による媒介蚊対策が徹底して行われているシンガポールで採集されたネッタイイエカおよびネッタイシマカ成虫をpermethrinで8世代室内淘汰した結果,抵抗性比がそれぞれ378倍,1099倍と,これまで蚊成虫からは報告例がないレベルの抵抗性に達した.Piperonyl butoxide(PBO)を用いた共力試験では,permethrin感受性が大きく上昇したことから,これらの蚊の抵抗性にはシトクロムP450酸化酵素が深く関与していることが示唆された.次に^<14>C-permethrinを基質としたin vitro代謝試験を行ったところ,これらの抵抗性系統ではpermethrin を効率よく4'HO-permethrinに解毒代謝していること,さらにその代謝活性はP450の補酵素NADPHに依存的でありかつPBOによって阻害されることが明らかになった.この代謝を担っている分子種が昆虫種特異性の高い共力剤のターゲットとして有望であると考えられた.シンガポール産ヒトスジシマカについてピレスロイド剤のナトリウムチャネル遺伝子をジェノタイピングしたところ,第1534番のフェニルアラニンがシステインに変異している個体が高頻度で見つかった.この変異はネッタイシマカのノックダウン抵抗性遺伝子(kdr)として知られているが,これまでヒトスジシマカからは未確認であった.今後,東南アジア地域を中心とした本種のkdr遺伝子分布および拡散を注視していく必要があると考察された.
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