研究課題
若手研究(B)
近年、研究代表者らのグループは、胆汁酸がヒト筋、げっ歯類褐色脂肪組織においてGタンパク共役型受容体TGR5の活性化、細胞内cAMPレベルの上昇を介し、エネルギー消費を亢進させる作用があることを明らかにした。ところが胆汁酸はTGR5の活性化以外に多様なターゲットタンパクを介した様々な生理作用を示すことが知られており、TGR5特異的な作用を明らかにするためにTGR5活性化剤の探索研究を行い、トリテルペノイドの1種であるオレアノール酸をTGR5アゴニストとしての新規骨格化合物として見出している。本研究ではより高活性のTGR5アゴニスト能を示すオレアノール酸誘導体、あるいはトリテルペノイド化合物を開発し、特に動物投与実験で、TGR5の活性化を介した筋機能の調節メカニズムを明らかにすることを目的とした。結果として最終的に37種類のトリテルペノイド化合物のTGR5活性可能を評価し、オレアノール酸と同レベルかそれ以上のTGR5活性化能を示す6種の化合物を見出した。特にTGR5アゴニスト化合物として新規骨格のベツリン酸、あるいはその誘導体化合物に非常に良いTGR5アゴニスト活性が見出された。研究実施中に他のグループよりオレアノール酸が核内受容体型転写因子FXRのアンタゴニストとして作用するという論文が出版されたため、上記37化合物のFXRアンタゴニスト能を測定したところ、いくつかであまり高活性とは言えないものの、FXRアンタゴニスト活性が確認された。今回見出した6種のTGR5アゴニスト化合物のうちFXRアンタゴニスト能を示さなかったものはTGR5の機能解明に利用し、FXRアンタゴニスト活性を示したものについては、FXRアンタゴニストが脂質低下剤として有用である可能性があることから、TGR5/FXRデュアルモデュレーター(高肥満、脂質低下作用を同時に示す化合物)の創薬コンセプトの確認に応用することにした。