研究概要 |
NOGマウスの体細胞は遺伝子改変に起因する脆弱性を伴っており、NOGマウス由来線維芽細胞への山中4因子の導入では、iPS細胞を作成することはできなかった。申請者は体性幹細胞の一種である間葉系幹細胞(MSC)への4遺伝子導入により、生体由来の線維芽細胞への遺伝子導入よりも高い効率でiPS細胞を誘導できることに着目した。マウスの骨髄から得られた細胞群に対し、FACSシステムを用いて白血球系のマーカーであるCD45を発現している細胞および赤血球マーカーであるTer119陽性細胞を除去し、残った細胞群からMSCのマーカーであるPDGFRα(platelet derived growth factor receptor α)およびSca-1(Stem cell antigen-1)を共に発現する細胞を収集することでマウスMSCを得ることができる(Morikawa et al; J Exp Med. 2009 Oct 26; 206(11): 2483-96)。申請者は、この方法で得たNOGマウスMSCに上記の4遺伝子を導入し、NOGマウスiPS細胞の樹立に成功した。しかしこれらの細胞のBlastcyst injectionではキメラマウスは得られなかった。そこで、申請者はさらに高確率で生殖細胞に分化可能なNOGマウスiPS細胞を樹立するため、c-mycを除いたoct3/4、klf4、sox2の3因子導入によるNOGマウスiPS細胞の樹立を行った。3因子導入により樹立されたNOGマウスiPS細胞は、通常のES細胞培地では分化してしまったが、申請者はiPS細胞の未分化状態維持に寄与することが知られているMEK inhibitor, GSK inhibitor, TGF-β inhibitor (Sheng Ding et al; Cell Stem Cell, 2009)を培地に添加し、3因子導入によるNOGマウスiPS細胞の樹立・維持に成功した。
|