研究概要 |
平成21年度の研究計画では 1) p57^<P27>ノックインマウスを用いた、発生過程におけるp27およびp57の機能的差異の解明 2) p57コンディショナルノックアウトマウスを用いた、各組織におけるp57の機能の解明 の実施を予定しており、上記計画に沿って本年度の研究を遂行した。 1) について 研究代表者が予備的研究で行っていたp57^<P27>ノックインマウスの解析をさらに進め、各組織における細胞周期やアポトーシス、分化状態などを検討した。その結果、大部分の組織でp57ノックアウトマウスで観察される表現型が回復する一方、一部の組織では表現型の回復が見られなかった。これらの観察結果から、p27とp57の個体内における機能的相同性と差異についての知見をまとめ、学術誌に報告した[Susaki et al. PNAS 106:5192-7, 2009 ; Susaki & Nakayama. Cell Cycle 8:2497-501, 2009]。 2) について 全身性のp57ノックアウトマウスで認められる生直後死を回避するため、p57コンディショナルノックアウトマウスを作製し、各臓器におけるp57の機能的重要性を検討した。本年度では、特にp57の発現量が高い神経組織における解析を優先し、神経特異的p57ノックアウトマウスを作製した。その結果、このマウスでは高度の水頭症や小脳の形成不全を認めた。さらに,p27・p53・E2F1などのノックアウトマウスと交配してダブルノックアウトマウスを作製し,CDK阻害因子同士の相補性や、下流のパスウェイなどを検討した。その結果、p57は神経発生に必須の細胞周期制御因子であり、神経発生期にp57が失われると、細胞がアポトーシスを起こし、上記のような重篤な表現型を示すことを明らかにした。本研究については、現在投稿準備を進めている。
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